はじめに
こんにちは、しおです。
前回は MySQL のコードリーディングしてみる、という記事を書きました。
techblog.styleedge.co.jp
今回はコードリーディングの続きではなく、最近読んだ面白い本の一部を紹介してみようと思います。
何の本か
今回読んだのは、『GitLab に学ぶ 世界最先端のリモート組織』という本です。 www.shoeisha.co.jp
世界 67 カ国以上に 2,000 名以上の従業員を抱える GitLab 社が、リモートワークにおける方法論やカルチャーの醸成方法をまとめて無料で公開している GitLab Handbook を読み解いた本です。
GitLab Handbook は全部で4,000ページ弱ほどあり、GitLab 社で業務を行ううえで必要な知識がほぼすべて網羅されているとのこと。例えば、コミュニケーション方法から報酬の決定方法や評価方法までもがドキュメントにまとめられているようです。
『GitLab に学ぶ 世界最先端のリモート組織』の著者は GitLab の社員ということではないようですが、この GitLab Handbook を翻訳して読み解き実践することで、自社をオフィスを持たない完全フルリモート企業へと転換させました。そこでの経験を踏まえて GitLab Handbook のエッセンスを抽出したのが本書です。
本書には『心理的安全性の醸成』という独立した章が存在します。
今期の個人目標として『自分が所属するチームの心理的安全性を高める』という目標を立てていたこともあり、今回はこちらの章を中心に心理的安全性に関連した記述を拾い読みしてみました。
GitLab についておさらい
GitLab は、2011年にウクライナにてディミトリー・ザポロゼツ氏がスタートさせたプロジェクトです。
よく似たサービスに GitHub というものがありますが、GitHub と GitLab は思想が異なります。
GitHub は Social Coding を重視しており(4年前までプライベートリポジトリの作成が有料だったことからもその点がうかがえます)、Social Coding という言葉からも分かるように、GitHub にはエンジニアコミュニティのレベルを高めるという目的があり、特にOSS開発の領域で活発に利用されています。
GitLab は プロジェクト管理 を中心とした考え方で、データの秘匿性を重視するなど GitHub とは異なる思想の上で運用されており、プライベートリポジトリを無料で作成したりオンプレのサーバーを使って自社専用の環境を構築したりといったことが初期の段階から出来ました。
techblog.styleedge.co.jp なお、過去の記事にもあるように、スタイル・エッジ システム事業部では GitLab を活用してプログラムのバージョン管理を行っています。
心理的安全性について
心理的安全性とは、エイミー・C・エドモンドソン氏が定義した言葉で、「チームにおいて、『他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰をあたえたりしない』という確信を持っている状態」であり、「信頼と尊敬が混ざり合う心理的に安全な文化」を指します。
心理的安全性が高い = ヌルい環境 ではない
心理的安全性の高いチームと聞くと、単純に「メンバーの仲が良くてどんなことでも言いあえるチーム」を(自分含め)想像してしまいがちです。
なかには、そこからさらに「なれ合い」「モチベーションが低い」「現状維持」といったマイナスなワードを連想してしまう方もいらっしゃるかもしれません。
前述のような状態は、下図において「快適ゾーン にいる」と言えます。しかし、チームや事業としての高い目標や基準と心理的安全性の高さは両立が可能です。
私が現在所属しているチームは、心理的安全性が高いと評価してくださる方が多いです。また私自身もそう思っており、今後も心理的安全性が高い状態をキープしたいと考えているのですが、ここで更に上を目指そうと思ったときに目標になるのが、学習ゾーン です。
メンバーそれぞれが学習ゾーンにいるチームは、気持ちよくチームとして団結して困難な仕事を成し遂げられると『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』にて述べられています。
これ以上は記事の本旨から外れてしまうので詳しく紹介しませんが、心理的安全性については下記の本にて詳しく説明されているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらすeijipress.co.jp
GitLab 社における心理的安全性の醸成方法
さてようやく本題です。
GitLab 社において大事にされている『職場で心理的安全性を確立する 7 つの考え』を紹介したあとに、心理的安全性を醸成するために行われている具体的な手法を2つほどピックアップして紹介していきます。
職場で心理的安全性を確立する 7 つの考え
本書で紹介されている、心理的安全性を生み出すために GitLab 社において大事にされている考えは、下記の通りです。
- 黄金律を破る
- 好奇心を歓迎する
- 健全なコンフリクトを推進する
- 従業員に発言権を与える
- 信頼を獲得し、拡大する
- 効率だけでなく有効性を促進する
- 創造性について別の考え方をする
ここでそれぞれの考えについて詳細に解説することはしませんが、ピックアップして解説していきます。
黄金律を破る
アメリカでは、『自分がしてほしい行為を、他人に対して実施せよ』という黄金律があります。
心理的安全性を高めるには、『他人がしてほしいと思う行為を、他人に対して実施せよ』という行動規範が大切とされています。
上記の GitLab Handbook からリンクされている心理的安全性を高めるための方法を紹介する記事によれば、「”自分が” こうしてほしいと思うから」ではなく、チームメンバーに対してどのようなコミュニケーションのスタイル、フィードバックの種類を好むのか希望を探り、その通りに実施するということです。ここでは自分視点ではなく、相手にどうしてほしいのかを主軸に考えています。
他人が何を望んでいるのか、どのように扱われることを望んでいるのか、ということを事前に知っておき、自分基準に依らないようなスタンスを取ることで心理的安全性に貢献をもたらします。
健全なコンフリクトを推進する
チームの雰囲気を悪くしないために衝突を回避するのではなく、必要なコンフリクト(衝突)は積極的にするべき、という考えです。
ただしその際には「コト」と「人」は分けるよう気を付け、決して人格を否定することの無いように努めます。
「同意しない、コミットする、同意しない」
レビュワー・レビュイー双方に、「意見や成果物を批判されても、人格まで批判しているわけではない」という認識を持つことが大事です。
意見や成果物は客観的な視点で公正に判断されるべきであり、それは個人の人格とは別の次元で議論しなくてはなりません。
handbook.gitlab.com
そのために、GitLab では最終的に DRI (Directoly Responsible Individuals) が結論を出します。 各自が意見を述べたうえで DRI が判断し、ひとたび結論が決まればメンバー全員がその決定を尊重してコミットすることが求められます。 handbook.gitlab.com
心理的安全性を維持しながらフィードバックする
パフォーマンスを改善するためにフィードバックをするのですが、ネガティブなフィードバックをすると人間はストレスを感じてしまいます。
そこで、GitLab ではフィードバックの手法として SBI モデルを使用しています。
handbook.gitlab.com
SBI モデルでは、簡単に言うと「状況(Situation)」「振る舞い(Befavior)」「影響(Impact)」を明確にしてフィードバックをします。
例えば「昨日の進捗定例会議でメンバーが発表している最中に(Situation)、部長が腕を組んで出席者を威圧していた(Behavior)。この行動が会議の参加者に不要なプレッシャーをかけ、自由な意見や提案を出しにくくさせる(Impact)可能性があるのでやめてほしい。」といった具合です。
SBI を明確に特定することで、 客観的な事実に基づくフィードバックになります。
おわりに
ということで、『GitLab に学ぶ 世界最先端のリモート組織』という本を読んで勉強になったことをつらつらと書いてみました。
GitLab 社はフルリモートの職場ということで、弊社に完全に適用できるものばかりではありませんが、SBI モデルを用いたフィードバックや黄金律を破るという心構え等、個人単位でも実施できそうな取り組みはぜひ積極的に取り入れてみたいと考えています。
本家の GitLab Handbook にも俄然興味が湧いてきたので、『GitLab に学ぶ 世界最先端のリモート組織』をお供にしてのんびり読み進めていきたいと思います!
スタイル・エッジでは、一緒に働く仲間を絶賛大募集しています。 もし興味を持っていただけましたら、以下の採用サイトも一度覗いてみてください! recruit.styleedge.co.jp